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HACCP義務化 東京五輪までに施行 食品衛生法国会論議へ

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日本農業新聞(2018・2・19)

政府は今国会に、全ての食品事業者に危害分析重要管理点(HACCP)の導入を義務付ける食品衛生法改正案を提出する。先進国で義務化が進む中、輸出拡大や訪日客の増加を踏まえ、国際レベルの衛生管理体制を整える。HACCP導入の負担感が強い小規模事業者向けには、緩やかな基準を設ける。義務化までに一定の猶予期間も設ける方向だ。2020年の東京五輪大会までの施行を目指す。

同法改正は15年ぶり。HACCP義務化の他に、食品企業が異物混入などで商品を自主回収する際に、自治体に報告を義務付けることなども盛り込む。

HACCPは、食品製造工程の中で、食中毒発生や異物混入を防ぐために、加熱や包装といった重要な工程を監視、記録する方法。材料や製法に応じて事業者自らが対策を検討し、行う衛生管理手法で、食中毒などの発生防止に有効とされる。欧米では義務化が進み、日本から食品の輸入を受け入れる際の条件にもなっている。

改正法案は、全ての食品事業者が、手洗いや清掃などの一般衛生管理に加え、HACCPによる衛生管理を盛り込んだ「衛生管理計画」を作り、実施する。HACCPにのっとり、自ら対策を検討し実施する「基準A」が基本だが、それが難しい小規模事業者らに配慮し、業界団体が作る手引書に沿ってHACCPを実施する「基準B」を設ける。実施は保健所の職員が確認する。

対象は、食品の製造や調理、販売など食品事業者全体で、施設ごとに計画を立てる。基準Bは、食品の種類が多くメニュー変更が頻繁な飲食店や、弁当の調理販売など製造した店舗での販売だけを目的とする事業者が対象になる。一方、食肉処理場は、検査員が常駐し実施しやすいことや、海外でHACCP導入が進むことから基準Aを適用する。

AとBの具体的な線引きは、食品業者への調査を踏まえて決める方針で、法律ではなく政省令に盛り込む方向で検討している。

農水省の調査によると、食品製造業のHACCP導入率は3割にとどまる。中小零細企業を中心に、必要性が理解されていないことや負担感が強いことが背景にある。政府は、日本政策金融公庫による長期融資でHACCPを導入しやすい施設整備や、研修への支援を行っている。中小零細企業に対する負担軽減策がこれで十分かなどが国会で焦点となる見通しだ。